憲法と税務調査

憲法と税務調査

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
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(1) 任意調査
(代表者)法人税法に基づく「任意調査」は、任意であるから調査を拒否します。
(調査官)納税者は、質問検査を受忍する義務がありますので、ご協力をお願いします(法162)。

(昭48.7.10 最高裁)
・質問検査に対しては相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負い、その履行を間接的
心理的に強制されている。
・質問検査を受忍しない場合には、それ以上直接的物理的に受忍義務の履行を強制しえな
いという関係を称して、一般に「任意調査」表現されている。

(2) 無予告調査
(代表者)事前通知なしに突然来られても、調査に対応できません。調査には協力できま 
 せん。出直してください。
(調査官)会社のありのままの実態を確認させていただきたいので、事前通知を行わないでお伺いしました。事前通知がなかったことを理由に調査を拒否することはできません。
(代表者)これから、社運をかけた大事な取引があります。調査よりも大切なことなので、調査は後日にお願いします。

(昭48.7.10最高裁)
調査の日時、場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行う上の法律上一律の要件とされているものではない。

(3) 質問検査権
(代表者)憲法38条で「自己に不利益な供述を強要されない」と定められているので、質
   問検査権は憲法違反であり、質問に答える必要はありません。
(調査官)憲法の定める供述拒否権は、刑事事件に関するものであり、行政調査である税務調査の質問検査権の規定は、憲法には違反しません(法153)。
(代表者)税務調査から査察調査に展開したら、刑事事件となるので、質問検査権はやはり憲法に違反します(法156条)。

(昭47.11.22最高裁)
質問検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、憲法35条(住居侵入、捜索及び押収に対する保障)、38条(自白の不強要)の法意に反するものではない。

(4) 調査理由の開示
(代表者)質問検査は「必要があるとき」に行うことができる(法153)と規定されていま
  す。調査に来た具体的な「必要性」を示さなければ調査には応じられません。
(調査官)調査の必要性の判断は税務官庁の裁量に委ねられていますから、それを示す必要はありません。
(代表者)質問検査権の行使は、納税者に大きな負担をかけるものであり、調査理由の開示を要求することは、納税者の正当な権利の行使です。

(平9.10.31最高裁)
質問検査権の行使は、過少申告の疑いが明らかでない場合であっても、申告内容の正確性を確認するために行使することができるものであり、申告所得以外に課税すべき所得があることを疑わせる合理的な理由や客観的な根拠を必要とするものではない。

(5) 身分証明書
(代表者)身分証明書を提示してください(法157条)。
(調査官)すみません、忘れましたが名刺でよろしいですか。私が調査官本人であることは、税務署に電話して確認してください。
(代表者)いえ、電話はしません。調査には協力できません。
(調査官) ・・・・・

(昭27.3.28 最高裁)
相手方が検査章の提示を求めたのに対し、収税官吏がこれを携行していないか、または携行していても提示しなかった場合に、相手方はその検査を拒む正当な理由がある。

(6) 現物確認調査
(代表者)机の中は、プライベートな部分だから、お見せできません。必要なものは私が取りだします。
(調査官)必要性があるかどうかは私の方で判断します。会社の机ですし、事業に関係のあるものしか調査しません。また、机の中の書類や貴重品等は私の方では触れません。現物を確認することは、社会通念上相当な程度であれば認められることになっていますので、ご協力をお願いします。
(代表者)質問検査権の行使はオールマイティではありません。これは、プライバシーの侵害であり、国家権力による人権侵害です。

(昭48.7.10最高裁)
質問検査権の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な程度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている。

(平成10.3.19 大阪高裁)
課税庁係官が、納税者の従業員の女性のハンドバックを、女性が拒否したにも係らず、強引に中を開け在中物を調べたのは、社会通念上の相当性を欠くものであり、違法な質問検査権の行使である。
課税官庁係官が、納税者の母や姉の承諾を得ないで2階(店舗とは区分された居住部分)に上がった行為は、社会通念上の相当性を逸脱した違法な行為である。

(7) 第三者の立会・調査妨害
(調査官)この方は税理士ではありませんし、部外者ですから、調査の立会はできません。
     退出させてください。
(代表者)税務調査が不当でないか、監視してもらうために立会をお願いしました。
納税者としての当然の権利です。
(調査官)守秘義務のない第三者の立会は、調査担当者としては認めることはできません。
(第三者)私は税理士ではないので、代理人として税務に関する主張はしませんが、立会は税理士の独占業務ではありません。私の立会を認めないのであれば、調査をさせません。帰ってください。
(調査官)調査の妨害をすれば、質問検査妨害罪の罰則が適用されます。あなたが納税者本人でなくても、質問検査妨害罪は成立しますよ。
(平5.3.11最高裁)
税務職員が質問検査の際、第三者の立会の要求を拒否した点に違法性は認められない。

(昭45.12.18最高裁)
質問検査妨害罪は、広く一般人をも対象とし、公務執行妨害罪にいたらない程度の行為を禁じようとするものである。

(8) 帳簿書類の借用
(調査官)署に持ち帰って検討したいので、帳簿書類をお借りしたいのですが、よろしいですか。
(代表者)法人税法153条では、質問検査権に納税者の帳簿書類を押収または領置する権限がありません。お断りします。
(調査官)それでは、あと2~3日会社にお邪魔して調査をさせていただくしかありません。調査を早く終わらせるためにも、ご協力をお願いします。
(ただし、法律改正あり、帳簿書類の提出は義務付けられました)

(9) 反面調査
(反面先)税務署から「取引金額に関する照会書」が郵送されてきましたが、回答しなく 
  ていけないのですか。
(調査官)法人税法154条に規定する質問検査権に基づいて照会させていただきました。
(反面先)当社が所有している情報は、個人情報に該当します。本人に無断で情報を提供すると個人情報保護法違反になってしまうので、回答できません。
(調査官)個人情報を提出していただいても、個人情報の「第三者提供の制限」の例外とされ、個人情報保護法違反にはなりません。ご回答をお願いします。

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